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半年の月日が流れ――。 未知の感覚と刺激の洪水に、イグニスの身体はもう随分と慣れていた。
全てが愛おしくて…自分の目から零れた涙は、ひどく辛かった。 は今でも毎日、眠る前に必ずイグニスの胸に耳を当てて、 鼓動を聞かせてくれとせがんでくる。 不安からではない……安心するのだと彼女は微笑して耳を澄ませる。 そうしている柔らかな肢体を抱き寄せて、形の良い頭に頬を預け、 今度はイグニスが満ち足りて微笑むのだった。 互いの熱を分け与えるという行為の、至上の愛しさを知ったから…。 こうして寄り添い、口吻けて…離さないと心に誓う。
遠くで笑っているの纏った洋服の白さえ…こんなにも目に眩しい物なのか――。 珍しく晴れ渡り爽やかな風が吹いている。 ストローハットを押さえ、満面の笑みでこちらに向かって手を振る。 それは本当に――眩しくて――眩しくて――幸福で――。
「…――ああ――すぐに、行くよ」
目線は二人とも同じ方向を見つめて――。 深緑の向こう側で海が煌々と光り輝いて…それを空が覆いつくして…。 前に回された彼の腕に、彼女はそっと小さな手を添わせた。 そして肩を振り返り、愛しい恋人の瞳を見つけると、にっこりと笑った。 は噛締めるように呟く。
愛している…――…心の底から、愛しているよ…」
『月の光』/ドビュッシー
20090808 呱々音 |