半年の月日が流れ――。

未知の感覚と刺激の洪水に、イグニスの身体はもう随分と慣れていた。







隣で寝息を立てる肌の匂い、髪を掬い取る感触、ターキッシュデライトの味をした――キス。

全てが愛おしくて…自分の目から零れた涙は、ひどく辛かった。

は今でも毎日、眠る前に必ずイグニスの胸に耳を当てて、

鼓動を聞かせてくれとせがんでくる。

不安からではない……安心するのだと彼女は微笑して耳を澄ませる。

そうしている柔らかな肢体を抱き寄せて、形の良い頭に頬を預け、

今度はイグニスが満ち足りて微笑むのだった。

互いの熱を分け与えるという行為の、至上の愛しさを知ったから…。

こうして寄り添い、口吻けて…離さないと心に誓う。





























初夏の芝生がこんなにも逞しく青く輝く物だということを、イグニスは知らなかった。

遠くで笑っているの纏った洋服の白さえ…こんなにも目に眩しい物なのか――。

珍しく晴れ渡り爽やかな風が吹いている。

ストローハットを押さえ、満面の笑みでこちらに向かって手を振る

それは本当に――眩しくて――眩しくて――幸福で――。




「イグニスー…!早くいらして?ここからの眺めがとても素晴らしいの…!」




――そう……本当に……素晴らしいよ、……シャムロック――




「…――ああ――すぐに、行くよ」




大股で駈け付けて、彼女の背中を後ろから包み込む。

目線は二人とも同じ方向を見つめて――。

深緑の向こう側で海が煌々と光り輝いて…それを空が覆いつくして…。

前に回された彼の腕に、彼女はそっと小さな手を添わせた。

そして肩を振り返り、愛しい恋人の瞳を見つけると、にっこりと笑った。

は噛締めるように呟く。




「……愛しているわ…イグニス…」



イグニスも優しく微笑み、一言一言確かめるように、囁いた。



「…―は私の生きる意味そのものだ。

 愛している…――…心の底から、愛しているよ…」




夏草の香り――、



頬を擽る風――、



ターキッシュデライト味の――キス――。


























fin.





















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『月の光』/ドビュッシー

20090808 呱々音























おまけのような話なので読まなくても
現時点で話自体は完結しています。
子供が生まれてます。
苦手な方はご遠慮ください。

After Story?