クリスマス・ディナーはダンブルドアの差し出した銀のクラッカーで幕を開けた。

我輩が嫌々ながらにクラッカーを鳴らすと、

中からハゲタカの剥製を載せた大きな魔女の三角帽子が現れた。

(―非常に―不愉快だ―)

ポッターとウィーズリーがニヤリと笑った事にも更に腹が立つ。

帽子をダンブルドアの方へ押しやると、

隣でくすくすと笑い続けているを睨みつけてやった。

ダンブルドアが食事を始めようと促し、皆様々なご馳走へと手を伸ばす。

そして実にさり気無く―そして抜け目無く―

ダンブルドアは我輩とに笑いかけながら言った。


「二人は同級生じゃしの。今夜くらい教師というのは忘れて、

 馴染みの呼び方で楽しく食事をしたらどうじゃろう」


驚いたことにマクゴガナル女史も嬉々と続けた。


「そうですよ、お二人とも。休暇中です―、

 親しい友人同士らしく、気楽になさい」


マクゴガナルの眼差しがに移った事で、

我々の痛ましい5年間を気に掛けているのだろうかと思った。


「あら、ルーピン先生はどうなさいましたの?」


占い学のシビル・トレローニーが、か細い声で聞いた。


「気の毒に、先生はまだご病気でのう。

 クリスマスにこんなことが起こるとは、まったく不幸なことじゃ」


それからトレローニーとマクゴガナルの―互いに辛辣な―遣り取りが続いたが、

ダンブルドアの朗らかな一声で幕は閉じた。


「――ルーピン先生はそんなに危険な状態ではあるまい。

 セブルス、ルーピン先生にまた薬を造って差し上げたのじゃろう?」

「はい、校長」

「その薬と一緒にケーキさえ持って行けば、

 きっとリーマスは何も文句は言わないでしょう」


が言うと、ダンブルドアは愉快そうに笑った。


「そうじゃろう、そうじゃろう」


周囲の目が豪華な晩餐に向けられているのを確認する。

我輩とはグラスを傾けると、密やかに目でクリスマスを祝いあった。


「メリークリスマス、セブルス」

「メリークリスマス、…


普段より幾分も上質なワインに舌鼓を鳴らした。


















大広間を出るとき、ルーピンに渡して欲しいと大きなバスケットを持たされた。

中にはケーキやら蜂蜜酒やら大概甘いものが詰め込まれている。


「………我輩はルーピンの専属梟ではない」


廊下を歩きながら気だるい悪態を付くと、隣でが笑った。

憐れに思ったのか我輩の手からバスケットを奪う。


「明日二人で持って行きましょう?

 ――リーマスだって今夜は来て欲しくないわ」

「…ああ」


窓の外を見れば、すっかり雪で埋め尽くされた白銀の景色が広がっていた。

そうして集中する事によって、生徒たちの消え失せた、

本当に静かな夜なのだと改めて痛感する。

先刻まで微かに鳴り響いていた鐘の音は、違う音色へと変化した。


「…とても素敵なクリスマス・ディナーだったわね」

「……―――


同じ様にぼんやりと窓の外を見ていたが、

少しとろんとした口調で返事をする。


「…なあに?」




不器用な子供の告白のそれのように、

目を少し落ち着き無く動かし、だがはっきりと呟いた。










「………―我輩は永遠など誓えない」


「ええ」


「そんな不確かな物を―…に約束するつもりも無い」


「…そうね」



言葉など雪のように虚ろで―。



「……だが我輩の残された時の中には、

 にずっと居て欲しい、共に…生きたい」


「………知ってるわ」



我々に今必要な物は"言葉"では無い―"形"が必要なのだ―。

それだけが今まで無かった――ものだから。

彼女の左手をそっと掬い上げる。



「……―約束など人の記憶に過ぎないのだ。

 我輩は不確かな物には誓わない」



細く繊細な指を掻き分けると、薬指にゆっくりと、

ローブのポケットで弄んでいたそれを、――指輪を嵌めた。

の目から綺麗な雫が幾筋も零れ落ちる。



「それでもを手放してやるつもりは、無い」



謀の締めくくりと言わんばかりに、薬指にそっと唇を押し付けてると、

を真っ直ぐと見据え、口角を吊り上げ嘲った。






「…私も―セブルスの隣で、生きていたい」


はらはらと落ちてゆく涙を、そっと指で拭ってやる。


「もう、離れ離れになるのは、嫌」








「………、愛している。

 我輩の魂は…永遠に貴様の物だ」







小さなダイアモンドに誓うのも決して悪くない。

紙の上の契約のような物を永遠と呼ぶのならば、

それは我々にとっては酷く愚かしい―。

その小さく華奢な肩を撫でるようにそっと手を添えて、

少し震えている唇に、キスをした。









だけが、拭い難い過ち全てを受け入れ、我輩を愛してくれる女性。


我輩が、愛した女性。

























#18
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お互いに待たせてしまっていたんですね。

200806024 狐々音