クリスマス・ディナーへ向かう前にを部屋へ迎えに行くと約束をしていた。

待たせるよりは良いだろうと思い、少し早めに扉を叩いた。

案の定、彼女の支度はまだ済んでいなかった。

部屋の中からなんとも呑気な返事が返ってきて、我輩は廊下に立たされ、挙句、

今日のドレスの色は何色だと思うかと問われる始末だ。

咄嗟の質問を真面目に考えている自分が少し馬鹿らしかった。

しかしここで間違えたら全てがご破算である。

冷静に考えた後、黒、と答えてやると―当然だが―当たっていたらしく、

部屋の中から出てきたは、本当に黒いドレスを纏っていた。



―――その姿の美しい事と言ったら―――。



他に例を見ぬ程、現実離れした美しさが目の前に存在していた。

全ての言葉が飲み込まれてしまう―…早い話ただ絶句である。

胸元にはエメラルドとダイアの鏤められた

スリザリンカラーの見事な首飾りが付けられていた。

(随分と粋な事を考えつくものだ)

と我輩は棒のように立ち尽くし、それなのにお互いを嘗め回すように見ていた。


「…セブルス、あなたそれ反則だわ」


どうやら今夜の我輩の格好がお気に召したらしい。

彼女が微笑んだので一段と美しさが増した気がした。

美しい女性を放っておける男など居ない事を、

果たしてこの恋人は自覚しているのだろうか?

こめかみに手を当てて、大きく溜息を吐いてやった。


「…そうやって無自覚に男を誘惑するにも程があるな。

 人より素材が優れているのだから着飾ると尚、達が悪い」


しかしこれには「無自覚なわけがないだろう」と逆に諭されてしまった。

ならば余計に性質が悪い事だけは解った。

クリスマス装飾が施された廊下を、と腕を組んでゆっくりと歩いた。

生徒などほとんど残っては居ないので、神経を尖らせる必要も無い。


「どうして私のドレスが黒だって解ったの?」


が不思議そうに聞いてきた。






学生時代、休暇前のダンスパーティーでは毎年、

様々なドレスを披露しては、ホグワーツ中の熱い注目を集めたものだった。

(我輩は断固として踊ろうとはしなかった。

 …だがラストダンスだけはに必ず引っ張っていかれた)

卒業する年の最後のパーティーで、我輩はを自分から誘った。

最後だからというのもあったのか、が着てきた漆黒のドレスが

我輩の目にはあまりにも美しく思えたのだった。

白い肌と黒いドレスのコントラスト―…。

若い我輩はヤドリギの下でに言ったのだ。

「………黒はの肌の色を一番美しく見せる―、






―それだけだ」


腕に掴まるをちらりと見ると、とても満たされた表情をしていた。

少しだけ頬が染まっているような気もした。

程なくして大広間へ到着する。

名残惜しいが―仕方が無い。

彼女の心中を波立たせるように、今宵の美しさを讃えておこうと思った。


によく似合っている―――…とても綺麗だ」


そして彼女から離れて恋人から教師へと姿を変える。


「…―さあ。大広間ですぞ、先生?」

「エスコート感謝しますわ――スネイプ先生」


負けじとこのような科白が返って来る。

これだから我輩は止められないのだ。

どこか挑発するような妖しい微笑をしっかりと受け取ると、

我々は教師と生徒たちの待つ大広間へと入っていった。

























#17
 /  表紙へ / #19


















―――――――――――――――――

スネイプの心中。

200806024 狐々音