ルーピン先生が授業に復帰すると、皆は両手を広げて大喜びした。

しかし先生は病み上がりの人間らしく、

あまり具合が良さそうには見えなかった。

それでも先生は皆ににっこり微笑みかけると、

杖を振って、それはそれは楽しい授業をしてくれた。

授業が終わると僕らは真っ直ぐ先生の机へ向かった。


「ルーピン先生!」

「なんだい?ハリー。ロン。ハーマイオニー」


先生はヒンキーパンクの入った箱を布で覆っていた。


「教えて欲しいんです、その、―――"究極の仕返し"について」


先生は危うくヒンキーパンクの箱を落としそうになった。


「…君たち一体どこでそれを知ったんだい」

「…―先生です、

 どうしても知りたいならルーピン先生に聞きなさいって」


先生は困った様子で溜息を吐くと「おいで。紅茶を入れるから」と

部屋の中へ招いてくれた。

紅茶を啜り、落ち着いたところで、

先生が話をしてくれるのを黙って待った。


「…―ええと―"究極の仕返し"についてだったね。

 うん、そうだな…あれは―………結構応えたね」


先生は陶器のお皿に盛られたチョコレート粒を摘むと口に頬張った。


先生は何をなさったんですか?」

「……私達の杖をね―"凍結"させてしまったんだ」

「え?」

「つまり、ただの棒切れという事さ」


信じられない―そんな事って可能なのだろうか。


「私達は心底後悔したね。

 杖が使えない状態がいかに不便かを身を持って教えられたよ。

 一体どんな呪文を使えばそんな愉快な魔法が生まれるのやら…。

 今こうして闇の魔術を研究していても、やはり、解らない。

 でも私たちの軽率な悪戯が過ぎたせいで、

 普段のからは想像もつかない程の怒りを買ったのは事実だね」


先生はまたチョコレートを摘む。


「杖はどうなったんですか?」


ロンが興味を隠しもせず聞いた。


「もちろん戻ったよ。きっかり1週間後にね」


先生は可笑しそうににっこりと笑った。

ハーマイオニーはどことなく目を輝かせていた。

(多分先生を尊敬しているんだ)


「ところで―先生は君たちにどこまで話してくれたんだい?」


ルーピンは伺うようにちらりと僕の顔を見た。


先生とスネイプ…先生、がその―恋人だっていうのを聞きました」


先生はやれやれと首を振りながら、どこか面白そうに笑った。


「君達、他の人には言ってないだろうね?」


僕たちはとんでもないと言わんばかりに首を振った。


「でも私達まだちょっと信じられません…だって…、

 あの、もちろん個人の自由です!でも、なんていうか、

 スネイプ先生と付き合うだなんて、ちょっと、非現実というか―、

 でも―…聞いたんです。先生はスネイプ先生のためなら、

 どんな危険な目に遭おうが構わないって」


ハーマイオニーはルーピンにちょっとでも2人の関係を

否定して欲しいようだった。

あるいは信じるに足りるための証拠が欲しかったのかもしれない。


「うん。その通りだよ。

 彼女はいつだって、誰よりもセブルスを信じていて、

 誰よりも彼の気持ちを解っていた。

 多分"一番"で"唯一"の理解者だ。

 事実先生は―…こうしてホグワーツに赴任される前まで、

 スネイプ先生のために…―5年も姿を晦ませて―、何かを調べ続けていた」


ルーピン先生の顔が痛ましそうに歪んだ。


「スネイプ先生に何かを頼まれたんですか?」

「いや、いや、そうじゃない。

 セブルスは酷く心配していた。もちろんお父上や彼女を知る私達も、

 みんなが彼女の身を心配していた。

 たまに届く便りだけで、セブルスは彼女の人柄だけを頼りに

 5年という時間に耐えて待ち続けたんだよ。

 しかし帰ってきた彼女は、誰のために何の目的で、

 何を調べていたのか、誰にも言わなかった―…もちろんセブルス本人にもね。

 どうやら隠しておきたいらしいんだ。

 彼のためだと言って僕に釘を打ってまでね」

「…誰も解らないんですか?」

「ダンブルドア先生には真実をお話してあるらしい。

 ―それだけがせめてもの救いだよ」


ルーピン先生はソファに深く座りなおし、大きく息を吐いた。


「人柄を重視して付き合う彼女の事だ。

 君たちには随分立ち入った話をしているようだから、

 きっと信頼しているんだよ。

 ハリー、ロン、ハーマイオニー。

 私も随分と口が滑ったからあまり強くは言えないが、

 これがとても繊細な問題なのは確かだ。

 私達には解らない二人の深い絆に十分配慮しなくては。

 君たちが進んで先生の信頼を裏切るような真似は、

 絶対にしてはいけないよ?」



それから僕たちはチョコレートのお土産を貰って、

寮へ向かって無言でとぼとぼと歩いていた。

先生は5年もかけて何を調べていたのだろう―?

それがどうしてスネイプのためになるのだろう―?

スネイプを憎しみたい者にとっては、

全てが不可解なことばかりだった。

それでも今これ以上詮索することは気が引けた。

ルーピンが部屋を出るときに約束してくれた防衛術の訓練と、

徐々に近づいてくるクリスマスの気配だけが、

気分を紛らわしてくれる気がした。

ブラックのせいでホグズミードへ行けない事も

予想以上に大きかったスネイプの問題も…。

今はもう考えないでおきたかった。

























#13
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首突っ込みすぎて疲れたハリー。

なんの絡みもなくてごめんなさい…!

200806023 狐々音