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neuf エリック―…!! ああエリック…!エリック…!! 自分の涙で喉が詰まるかと思った…! 私が柵の向こうの闇の方を振り向くと、物音ひとつ立てずに…彼はそこに立っていた… 私の耳は…音ではなく、確かに"気配"を感じたのだ。 もしかしたらば至って人間的に、彼のムスクの匂いを嗅ぎ取ったのかもしれないし、 本当は…彼の駆け上がる音を聞いたのかもしれない。 だけどそれがどんな落ち度だと…? ああ…!信じられない…! だって唯一の支えを、希望を、今ようやっと再び目に入れる事が出来たのだから…! 心の大切な囲いの中で、エリックを想わない日はなかったのだ。 親に逸れた子供の様に、私は無我夢中で彼にしがみ付いた。 どうかもう私を置いていかないで…
私を…ひとりにしないで…!
そこで咽び泣いていた少女は、私を見つけた瞬間に、 それを立派な泣き声に変え…その小さな肩を震わせた。 私の胸に飛び込んできたは、息をするのも忘れ、必死に私の名前を連呼するのだ。 ああ…なんという事だ―… 彼女の待ち侘びていた春とは、こうも私にとって都合の良い夢なのか…? 私のベストをしっかりと掴んで、顔を埋めて…こんなに泣いて…。 気付けば私は、抑えられずに溢れてしまった泉の勢いに逆らえず、 小さな彼女をすっぽりと包み込むように、自分の腕で抱き締めていた。 確かに伝わる熱に、私まで涙が溢れそうになる。 この行為がどんな愚行かと、理性的に考えるより先に、 身体が衝動的な思いを遂げようと必死だったのだ。 どれほどの時間、この腕に彼女を拘束しているのかも解らぬ程に 私は…惚けているのだ…。 官能的な溜息が口を突く―…… …まさか! その失態に気付いたのは、確実に己の身に…原始的だが… それはそれは酷く情熱的な火を、感じた時だった。 私はまるで、初めての物事に、怯え逃げる子供の様に、 情けなさも省みず、強引にの華奢な肩をしっかり掴んで突き放した。 …―私は…なんて浅ましい事を―!!
…エリックが私を抱き締めた…! 強い力で私を抱き寄せて、我が子に再会する親のように、 安堵の溜息…のような物を、私に囁くのだ…。 信じられないと想った瞬間に、既に私は体中の力が抜け、 常に緊張状態に曝されていた神経が、一気に緩み、 先程までとは違う…とても熱っぽい涙が溢れた。 肺の隅々までが、彼で満たされていくのを感じる…。 しかし次の瞬間、突然エリックは私から顔を背け、自らの体から私を引き剥がしたのだ。 …ああ!きっと私は、何か彼の気を害する、とてもまずい事をしでかしてしまったのだ…! 直感的にそう悟ると、みるみるうちに冷たい恐怖が体を駆け抜けるのが解った。 彼はその長い手をいっぱいに突っ張らせて、私を遠くへ遠ざけようとしている。 肩に食い込むエリックの細い指が、どうにか私を離せずにいるだけで… どうしよう…! また置いていかれるかもしれないという恐怖と、困惑に苛まれ、 私はどうしたって彼に気を直して貰う他ない… ただでさえこんなみっともない姿の娘が、 幻想的な魅力を全身に纏った階級高い紳士に とてもはしたない事に…いきなり抱きついたのだから…! ああエリック…ごめんなさい…!
思わず顔を背けてしまった。 仮面を着けていると自覚していても、こんなみっともない私を…!! とてもじゃないが、のそのガラス玉の様な目を真っ直ぐ見られなかった。 突如として蘇ってくる、自分の原始的な欲望に、憤慨の言葉を浴びせ罵り、 平静になる事に全神経を集中させた。 ようやく頭が冷え始めた頃に、とてつもない力で彼女の肩を掴んでいる事に気付き、 慌てての顔を盗み見ると、涙目の状態のまま、酷く困惑し、青褪めていた。 やはり…!当然だ!! 仮に慕っていたとて、素性も知れない男にいきなり身ごと拘束されたのだから…! 少なくとも淑女に対して取るべき行動では…決して無い。 なんという愚行!なんという凡愚! 自分に激しい怒りを覚え、喉がヒリヒリと燃えるのを感じた。 頭の片隅で、彼女の信頼を裏切ったという事実が膨らもうとしている。 あああ…!さてどんな言葉で自分を罵り、なじり倒してやろうか…!! 再度、燃えるような目でを覗き見た時だ―…。 その朱色の唇が、恐れ震えながら紡ぎだした言葉に…耳を疑った…。 「わたし……自分ばっかり舞い上がって…抱きついたりして… 貴方の気分を悪くする様な事をしてしまって…ごめんなさい!どうか許して…!
お願いですからどうか…!どうかもう…私をおいていかないで下さい…!」
先程までの自分への一切の怒りやら憎しみやらを… すっかりどこかへ忘れてしまった。 「おねがいです…お願いですから………エリック……」 彼女はまた、元の咽び泣く少女に戻ってしまった。 腕と頭を力なく垂れ、ただ只管、待っているのだ―。 …私からの審判を―…。 「そうじゃない、」 私はとにかく、その間違った認識を否定する言葉を発していた。 は正しい回答を、縋るような目で待っていた。 しかし…これ以上説明するには、 あまりにも―私自身が―情けなさ過ぎた。 話題を逸らすように、切り出した。 「………、聞きたい事は…山ほどあるのだが、」 チラリと明るい方を見た。 「……ここでは拙いからね。場所を変えよう」 は我に返ったように、私と同じように邸宅の方を確認すると、 あの橋の下へ―…と呟いて、軒下に掛けてあった、 闇では雑巾か何かにしか見えないそれを… …ショールを…巻いて、静かに庭を後にした。 |
パッションな再会が目標でしたのに…
でしたのに…(トーンダウン)
浅ましいとか言ってますが、
ある意味本質的だよ…ね!(目反らし)
…彼女気付いてないみたいだし…ほ
すいません解らない方は結構です(次の話題へ)
20070509 狐々音