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trente-trois エリックは止めたが、その日の日付が変わる頃、マダム・ジリーの部屋を訪ねた。 ひとりで行けると言うと、エリックは顔を歪めたが、 ここへ来てから散々彼に習った、人に見つからずにオペラ座を歩く方法を、 私は思いのほか上手に身につけていた。 エリックは渋々その申し入れを受諾し、あまり遅くならないようにと告げた。
「もう子供では無いしね。エリックにも良い薬になるでしょう」と微笑んだ。 マダムはソファに私を座らせると、熱い紅茶を出してくれた。
もうぼんやりとしか思い出せない母の温もりを思って。 幼い頃、あの白い手に「泣いていいのよ」と諭された言葉だけがふいに浮かんだ。 俯いて涙する私の頭を、マダムの手は撫で続けた。
でも…そうでなく、が私から受け取る物がまだあるのだと感じたなら、 いつでもここへおいでなさい。 母と思えば良いのです。私はを自分の娘だと思って接するわ」
自分のお腹を痛めて生んだ者にしか、到底たどり着けぬ悠久の愛。 心を乱してしまった私を落ち着けるように、 マダムは他愛も無い話を始めた。
年期の入ったワインの木箱を引っぱり出すと、 大切にしまってあった一冊のアルバムを取り出した。 私の隣に腰掛けて、おもむろに話し始めた。
そして良きライバルでもあった」 「その方も、バレリーナ…だったんですか?」 「ええ――そうよ」
レッスン場の大きな鏡が倒れて、その時割れた鏡の破片で、深い傷を負ってね」 「あの、ちょっと、ま…待ってください」 「まあ…、顔が真っ青だわ」 「イザベルと、おっしゃるのですね?その方は」 「ええ、そうよ。私と同い年。イザベル・ルフェーベル」 「…―イザベルの傷は――左腕――でしたか」 「貴女、なぜそれを…」
やけに手足が冷たくて――とにかく混乱しながら、私はひとつの答えに至っていた。
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ひいおばあちゃん、出てきたー…!
20100124 呱々音