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「丑嶋くん、本当はもうちょっと隠しておきたかったんじゃないかな」
柄崎の面倒くさい酒に巻き込まれながら、 高田もその言葉で何かを察したようだった。
「……女ってのは、弱味になるからな…」
俺たちのこと、もうちょっと信用してくれたっていいじゃねェか…」 「だから今日呼ばれたんだと思うよ」
「だからね。 かおちゃんなら、一生隠しておくことだって出来ただろうってこと」 「なるほど…」
さんが駄目なら柄崎さん教えてくださィよォ〜」
は諦めたように眉間を押さえた。 柄崎はやけくそだと言わんばかりに開き直った調子で声を張り上げる。
“料理上手くなって出直してこい!”ってな!」 「ちげェよバカ! “料理上手くなったら嫁にもらってやるよ”だろォが!」
「なんで全部覚えてるの、加納」 「あれは男心に響いた」
加納と高田がマサルの頭を叩く。 はそれを見て笑った。 丑嶋がに嘘をつくとは思えない。 だが。 少年の他愛も無い一言をアテにするほど子供ではない。 裏と表の人間が身を固めるというのは、とんでもない大博打だ。
両親と妹が事故で亡くなってさ、頭の中真っ白。 なにか拠り所がないと、こいつ駄目になるって… かおちゃんには解ってたんだと思う」 「さん…」
問題は柄崎のうんこ野郎である。
シャイ!だのヘイ!だの、謎の気合いと共に一気に飲み下した柄崎の表情は、 どこか切なそうに見えた。
翌日の昼、初めてカウカウファイナンスに寄った。 今までは「絶対に来るな」と言う暗黙のルールがあった。 それが昨日、飲み会から帰って面と向かって聞いてみたら、 丑嶋は「まあ良いんじゃね」と緩い返事を返して来たのだった。 であれば。 一度見ておくのもいいんじゃないか、とは心を決めた。 もちろんただの客として来ました…という体だろうけれど。 昨日同席しなかった小百合が、まるで客のように丁寧に中に紹介してくれたものだから、 はほんのちょっとスパイのような気分になった。
「え!」
お昼なんで、皆さんにお弁当作ってきましたよ」
乗らない物もあったので、予備の折り畳み机も出した。
「マサル、耳元で叫ばない!」
ところ狭しと並べられた色とりどりの料理は、コース料理顔負けの味ながら、 洋食和食とどちらも食べやすい物ばかりだった。
「マサル静かに食えコラぁ!頭に響くンだよ!」
「高田さんって紳士ですよね。 物腰柔らかいっていうか、女性が安心する感じ」
「おう」
柄崎は心の中で悪態を吐く。 二日酔いで、頭の中では煩いマサルの声がこだまするし、ズキズキ痛みが走る。 そんな柄崎でさえ、塩の利いた握り飯を食むと、美味い…と思った。 が料理を広げた瞬間、すぐに気付いた。 丑嶋の好物の隣には、ちゃんと加納や柄崎の好物も入れられていた。 (優しいところは何年経っても変わらねェンだな…) 静かに箸を伸ばして、今度は口いっぱいに好物を押し込んだ。 懐かしい味がした。
「あ?」 「私に告白って、してくれたんだっけ」 「したろーが」 「全然覚えてないンだわ」 「うーたん」 「うーたん?」 「見せたろ」 「え?なにそれ婚約指輪的な?」
丑嶋が大好きだった母親の形見。 うーたんと名付けたウサギは、まだ母親が生きていた、 丑嶋の一番幸せだった頃の思い出の象徴なのだ。 丑嶋は初代うーたんを番いにし、子孫をどんどん増やして、 どの子にも惜しみない愛情を注いでいることを。 は知っていた。 それだけが、丑嶋と亡き母親を繋ぐ、唯一の絆なのだ。
肩越しに振り返る。丑嶋はこちらを見ない。
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深大寺の動物霊園のことですね。
20151118 呱々音
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