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グリーナウェイがBAUを去り、 エミリー・プレンティスが加わった時――。 最初に訊いたことは「あの2人は付き合ってるんですか?」だった。
我々すら容易には踏み入れられない奥深い部分にな。 でもあいつらはそれに気づいちゃいない。 まだ小さな子供と同じなんだ。――プレンティス」 「はい」 「見守ってやれ」
大きなショックが残ったが、彼の穴を埋めるようにチームに加わったのは、 BAU立ち上げにも関わった伝説のプロファイラーだった。 このデヴィッド・ロッシという人物は、 リードとの関係を恋愛関係とは認識せず、 彼らしい配慮で黙認していた。 嘘みたいな話だが、この期に及んでリードとの間にも 付き合っているという認識はなかった。
普通はどんなに意識して気を付けたってバレるもんなんだが。 今のところ、お互いがしっかり割り切れている証拠だろう」 「ええ。天才がふたりというのも困りものです」
ホッチナーとロッシの暗黙の了解だった。 とは言え、メンバーの誰にでも等しく懐くの存在は、 ロッシにとっても決して悪いものではなかった。 自分と3人の前妻たちの間にいずれも子供はいないが、 もし娘がいたらこんなものだろうかと 錯覚をおぼえるくらいには可愛いものだと思う。 自らの積に耐えられず、職を退いたギデオンの 真の眼鏡に適ったという名の貴重な原石は、 やはり素晴らしい宝石だったと評価せざるを得ない。 愛妻ヘイリーとの離婚調停で、 心身ともに打ちのめされていたホッチナーを慰めたのも、 であるならば、なんら不思議なことはない。 幼い表情を見せたかと思えば、妙に神妙で、 大人びた表情をしていたりする。 彼女のどこか物憂げな瞳は嘘を見透かす綺麗な目――。 ロッシはそれをこのチームには必要な要素と判断した。
は小さな声で朝の挨拶を述べてコーヒーを差し出した。
は恥ずかしそうに俯いてしまった。 こういう時は大抵、なにか特別な話がある。 コーヒーを啜りながら時計を見る。
その前にJJのオフィスに集合ね。 ガルシアは私が連れてく」
足早にJJのオフィスへ向かった。
すでにそこにはスペンサー・リードが座っていた。 手持ち無沙汰なのか、 手元のノートによく分からない落書きをしている。
「ああ――おはようモーガン。 どうしたって、何が?」 「お前が」 「僕が?」
お前のママも言ってただろ。 ――スペンサーは、」 「コーヒーの飲み過ぎよ。だからアナタは痩せてるの、でしょ。 はいはいよく覚えてますよ人より記憶力が良いんだから」
彼はまるでちょっと悪ぶった兄のように、 放っておけない弟の目をしっかり覗きこんで、 誠実な声で改めて問いかけた。
「あ〜……ええと――、」
ボールペンを置いて何度かモーガンとノートの間で 目線を彷徨わせた。 そして観念したように口を開く。
まず最初に状況を把握しようと試みたのはJJだった。
「なにをしたら恋人同士になるの?」 「…そうきたか」
まずいコーヒーを一気に煽った。
リードとは、どこまでいったの?」 「どこって?」
絶妙なタイミングでガルシアが助け舟を出してやる。
リードとはいつも何してるのかなーって」 「なんでスペンサー?」
職場出たらどっちかの家に直行って言ってたじゃん!」 「いつもじゃないよ?」
――もしかしてもう……合鍵持ってるとか?」
しかし本人は何が言いたいのかさっぱり解らないと言った表情だ。 プレンティスが困ったように聞く。
それからチェスもする。これなら私も勝てるから。 あとは――最近の学会で発表された 一番新しい論文について討論したり、 世界別の古典文学を交互に朗読したり。 ソファでアイス食べながら借りてきた映画も観るよ」
だがとても愛しげにを見つめていた。 まるで実の姉のような眼差しで――。
――だが。 肝心の姉たちは次に口から出る言葉が行方不明になり、 完全に固まりきっている。 強いて言うならガルシアは軽くパニックを起こしている。
駄目だよ、私に嘘つくなんて許さないんだから! ちゃんと正直に言っちゃいなよ!」 「正直に…って――だから!わたし何を言えばいいの!」
戸惑いと混乱でパニックに陥る女が4人。 ブリーフィング開始まで――あと5分。
そういう事もしてねえって言うのか」
噎せながら慌ててハンカチを取り出すと、 困惑を隠すようにして神経質そうに口を拭う。
「小学生かよ! ――ったく…今ここに陪審員がいたら、 お前のしてることは極刑ものだぞ」
ごめん――何年の事件だろう。担当した判事は、」 「例えだ」 「あー…」
ばつが悪そうに目を彷徨わせた。 ――解っている。 正直、リード自身も困っているから わざわざこうして言い出し難いであろう問題を 正直に打ち明けてくれているのだ。 自分を頼ってくれたリードをこのまま放っておけるほど、 モーガンは大人にはなれないし、何より、 幼少の頃から子供らしいことを体験してこなかったリードが 一生懸命、新しい感情に向き合っているのが嬉しかった。
こういう関係が発展していかないのは…男の責任だ」 「ライラは自分からキスした」 「そうだな、あの時は、彼女からした。 ――で、どうなった。結局ライラとお前は付き合ったか?」
自ら喉の奥へと押し戻した。
お前は優しいし、思いやりがあるし、良い奴だ。 そんなことしなくていい。 ――いや、男からするっていうのは悪くないんだ。 そうじゃなくって、 何も無理にそうしろって意味じゃないってこと」
納得したように頷きながらモーガンの声に耳を傾ける。
お互いが特別だって。 代わりの利かない、かけがえの無い存在だって、 心のどこかで気付いてるからこんなに悩むんだよ。 お前は相当ウブだけど、もそれに輪をかけてウブだ。 焦る必要なんかねえよ。 ――リードがその先を望むなら、 怖がらずに2人でちゃんと話し合ってみろよ」
先ほどまでの女子会議がまるで嘘のように、 冷静さを帯びてリードと短く挨拶を交わしている。 プレンティスはつい数分前まで必死にまくし立てていた問題が 幻だったのではないかと疑いたくなった。 幸いホッチナーとロッシはまだ来ていない。 プレンティスはモーガンを顎で呼ぶと、 会議室を出て、声を潜めて、 事のあらましを掻い摘んで説明した。
BAUの可愛い妹と弟は、何事もなかったように 会議の資料を眺めている。 その姿を見つめながら、プレンティスが呟く。
あの子たち一体どんな育ち方したの――?」 「さあな――想像もつかねえよ。 だけどあいつらの居場所は、ちゃんとここにある」
私はあんな純粋な恋愛したことないもの」
「私FBIのまずいコーヒー大好き」 |
すみません。ついつい。
書いてて楽しくなってしまってしまいました。
20120716 呱々音
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