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「“ミス・の復帰を祝う会”――か」
それはがBAUオフィスに舞い戻った象徴そのものだった。 つい昨日まで寂しかったその画面に、今朝はカラフルなチョークで文字と絵が綴られている。 文字は踊るように軽やかだった。 モーガンは嬉しそうに笑った。
「マジかよ」
「ポルケ…なに?」 「ポルケッタ。ウンブリアの郷土料理」 「ウンブリアってどこだ?」 「イタリア」
モーガンも承知したように瞼を閉じて笑った。
「うん。ポルケッタってすごく手間がかかるから どこの店でも置いてあるわけじゃないんだよね」 「そのポルケッタとやらを出してる 美味しいイタリアンレストランの店を知ってる奴なんて このBAUでは間違いなくロッシだけだろうな」 「本人はFBIの中でも自分だけだ、って言ってた」 「――なあリード」 「ん、なに」
モーガンはそんなリードの様子を横目で見ながら、少し声を抑えて聞いた。
咄嗟に前かがみになったものの、抵抗むなしくシャツに茶色い染みが出来た。 モーガンは咄嗟にクリネックスの箱を差し出していた。 ずぶ濡れになった犬みたいな顔でリードはじっとモーガンを睨みながら 差し出されたそれで染みをゴシゴシと拭う。
「…染みになるから着替えてくる」
綺麗にたたまれたシャツを取り出してオフィスを出ていった。 廊下でに鉢合わせた。
――どうしたの、その染み」 「……コーヒーこぼした」 「モーガンね」 「だからなんで皆わかるの!」
私洗うわ。早くしないと染みになっちゃう」 「…クリーニングに出すから」 「でも――そのシャツお気に入りの…」 「………ちょっと待ってて」
でもなぜかそれすら愛しく思えて、リードはわざと困った顔を作って心中をごまかした。 更衣室で慌ただしく着替えながら、ふと腕に朱い痕を見つけて心臓が飛び跳ねる。 誰も見ていないのに辺りを見渡してあたふたしてしまった。 ――情けない。 ぐったりと肩を落とす。 意を決して、もう一度、その場所に残された印に目を這わせる。
優しく――優しく――。 溺れそうな意識の中、ギリギリの理性がリードを諭す。 だがの唇が一生懸命に自分を求めているのを感じると、 徐々に緩急をつけるように、互いに煽り始めた。 どちらもこういう行為には不慣れだから、オリジナリティは必須だった。 酸素を求めるように彼女の唇がかすかに離れて、 うっとりとひとつ息を吐き出した。 見つめ合いながら額をくっつけて、が微笑む。
手をつないで向かったベッドルームで、またキスをした。 でも今度はそれは合図で、ぎこちない手つきで――でも労るように、 纏っていたものを徐々に取り去っていく。 一糸まとわぬ姿を見つめ合って、恥じらいに少し俯く。 でも怖ず怖ずと抱きしめ合えばそれは驚くほどしっくりした。 肌が相手の肌を求めて吸い付くから。 洗いたてのシーツにふたつの身体が横たわると、ダウニーの香りがした。 くすぐるように言葉を紡ぎ、鼻先をくっつけて笑い合う。 くまなくキスを浴びせて、そのひとつひとつにリードは慈しみを込めながら、 が恐怖を抱いていなかをしきりに気に掛けた。 甘えるように切なくねだって、互いが欲しがるものを与えられるだけ与えた。 ふたりだけの秘密は痺れるほど衝撃的で、そしてとても愛に満ちていた。
朱い印をそっと指でなぞって、思い出したように薄いブルーのシャツに着替える。 慌てて廊下に飛び出すと、は幸せそうな笑顔を向けてくれた。 ――綺麗だ。 素直にそう感じる。 はリードの手からシャツを奪うと「お洗濯のお時間です」と言って 耳に心地よい声で笑った。 |
モーガン先輩だけじゃなくて、他のパパやお姉さまたちにもバレてると思う。
20120917 呱々音
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