夕日が障子に、部屋に、色を着ける。

茜色に染まる少女の肌は柔らかく、滑らかで、伝う汗は甘かった。

恥じらう仕草も、耐える仕草も、全ては風間を誘うための罠のようですらあった。

生娘を抱くのは初めてでは無かった。

至極貴重な鬼女、その血の純度は低くとも、気高い風間に生まれし純潔の男鬼に

処女を切って貰いたいと願う親は存外多いもなのだ。

丈夫な子孫を生めるという根も葉もない昔話を、真実と信じる輩も残っていた。

遠路はるばるそれだけのために娘を寄越す鬼も居る程である。

そして娘は皆一様に風間に躯を捧げるのだ。

だがは今までの娘たちとは違う――。

この例えようも無い明らかな違いの正体は何であろうか。

己が心底好いた女を抱くという事が、ここまでの恍惚と心酔を齎そうとは――。

溢れる欲望はまるで底を知らず、枯渇した喉を満たすように清らかな躯を乱暴に貪る。

男の下で、一挙一同に翻弄される少女の顔を、目に焼き付ける。

触れれば浮き立ち、乳房を食めば息を漏らし、擦れば震える。

――従順な躯だ。


「美しいな――お前の全てが俺を誘い、惑わせ、酔わせる」


風間はふいに囁きでの耳を犯す。


「俺がどれほどお前の肌に触れたかったか諒解るか」


は身を捩って見せるが、かわせるはずも無い。

耳を嘗められると、は艶めいた声を漏らした。


「ほう――これが好きか」

「や…っ…ふ、…うん、っ、あ」

「…お前の誘いに乗るのもなかなか悪くないな」


悩ましい舌先は首をかすめ、鎖骨を這い、胸の飾りを弄び、腹をなぞって下りて行く。

導かれるままに辿り着いた未熟な箇所を嘗め上げてやった。

まるでその舌で融かし尽くすように、何度も――何度も――。

指を噛み、声を押し殺す姿はなんとも愛らしいではないか。

脚の付け根をなぞれば、背を反らせて応える。

芽を食めば、びくりと躯を震わせる。

水音で潤むそこから顔を上げ、甘い蜜を手の甲で拭ってみせる。

は羞恥に顔を背けた。

ここまで多少手荒に抱き嬲ってきた風間だが――眼差しは焦がれるようで、

瞳には慈しむような恋情が宿っていた。

少女の頬を捕らえると、顔を突き合わせ、瞳を捕らえて風間は告げる。


「俺に逆らわぬ良い躯だな――それに甘い――。

 生娘故に快楽とはほど遠いかもしれぬが……案ずるな。

 力を抜いて、俺に身を任せろ――…翻弄されるがままに、乱れ咲くが善い」


女子の細腰を掴まえ、己を充てがい、腰を圧し進める。

一際狭く、きつい――みしみしと音が聞こえる様だった。


「……っく……しっかりとくわえ込んでいるぞ…っ…そんなに俺が気に入ったか」


痛みに耐えるの身を解すように、胸の膨らみを包み、若く晴れる芽を弄ぶ。

その度に快楽の並に震えるのなんと美しい事か――。

風間は満足気に笑うと、容赦なく腰を動かした。

激しく、何度も打ち付ける。

は与えられるがまま、己の腹に埋まる痛みと快楽の境に、悩ましく泣き叫んだ。

多い被さる風間は、先程とは打って変わって、

さも愛し気に……大切そうにの身を抱きしめていた。

着物越しの背中に小さな爪が立てられるのを感じて、風間は苦し気に諭す。


「…っ我慢するな――声を…っ、出せ」

「ちっかげっ、さまっ、ちかっ…さま、ああ…っ!」

「……っ!」


名を呼ぶと同時にその高まりは絶頂を迎え、

熱く煮えたぎる男の白い欲は、少女の腹の中へと吐き出された。

薄らと汗を纏う男の胸に縋り付き、全身を駆け巡る快楽の渦に翻弄され、女は躯を震わせた。
















が目を醒ました時、既に陽は落ちていた。

風間は――書院窓からぼんやりと外を眺めて、煙管を燻らせていた。

月明かりが差し込み、春の夜風が素肌を撫ぜる。

その度に桜の花弁がひらりと部屋に舞い落ちて――。

風間にもたれるようにして、はすっかり眠っていたらしい。

彼女の肩が冷えぬように――風間は着物を手繰っての身体を抱いていた。


「…かざ……千景様」


名を呼べば――風間は――千景は、

月光のように柔らかく艶やかに微笑んで、の方へ顔を向ける。


「…起きたか――寒くないか」

「はい」


いつの間に着替えたものか、千景はしっかりと着付けを済ませていた。

少し怨めしい――そして密かに名残惜しい気さえした。

は自分だけが夜気に肌を晒す身である事を自覚して、着物を手繰り寄せ赤面した。

そんな様すら千景を満足させて止まない。

本能の示唆するまま顎をすくうと、深く味わうように口づけた。

煙管からは紫煙が一筋夜空へ伸びて消えてゆく――ゆらり、ゆらり、と。

むさぼられ、味わわれるままに、の脊髄をぞくぞくとした甘い痺れが駆け抜けて行く。

その行為にどれ程の時間溺れたとて、飽きる事は無いであろう――。

千景は名残惜し気に唇を解放する。

そして一口煙を吸うと、トンと吸殻を落として、煙草盆に隠れて見えなかったが、

どうやら小さな霧箱を手に取って――。

蓋が開けられる――するとそこには――白銀色に輝く桜を模した簪が納められていた。

千景は惚れた女の髪にそっと簪を飾ってやった。


「…の綺麗な髪には、やはり桜の花が良く栄えると思ったのだ。

 ささやかだが悪くない…思った通りだ――なかなか似合っているぞ」


そして存在を慈しむように、確かめるように――再び腕いっぱいにの身を抱きしめた。

はされるがまま従順にそれを受け入れ、応えるようにそっと背に手を添わす。


「…私のために……里に――行かれたのですか」

「――お前を生み、お前を育んだ里の形見だ。

 親や兄の代わりとは言わぬが、嫁ぐに何か残してやりたいと思ったのだ。

 重くのしかかると言うのならば、の名は永劫捨てるが善い。

 だが――かつて銀と桜で栄えた慎ましくも美しい故郷が存在した事を、

 俺たちは決して忘れてはならぬのだ」


瞳からは大粒の涙が音も無く落ちてゆく。


「……嬉しゅう――、ございます。

 私の愛したあの故郷は――…いつもこの胸に在るのですね」


は自らの唇を、そっと千景に差し出した。

涙が出る程に優しく触れられ、月明かりに輝く簪がしゃらり、と微かに鳴く。


「ありがとうございます、千景様――は…この世で一番幸せな女です」


もう悪夢は見ないだろう――はぼんやりと、だがそう確信した。

千景の腕で、今、女と成って、生まれ変わったのだから。

縛られるようにきつく抱きしめられて、思う。

これ以上の恍惚とした幸福など、他に在ろうはずも無い。

春の雪が舞う、桜の香の風が漂う見事な月夜の中で、

千景の馨りが肺を、心を、充足させる。

明瞭とした声が、夜に響く。


「風間――吾が妻よ――。

 愛しているぞ――この俺の気が、触れる程にな」




















































 /  表題


















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ここまでお付き合い下さいまして心より感謝申し上げます。

千景は口が悪いけれど素直じゃないだけで本質はとても優しい男だと思います。

優しさよりも【鬼の頭首】としての自覚の方が強いのでしょうね。

ありがとうございました!感想頂ければ幸いです!

20111020 呱々音