その後、デュカードが自宅に訪ねてくる事は無かった。

クレインがその話をしない限り、

は自分から問いただす事はしないと心に決めていた。

平静の仮面の下で、彼が目的のために虎視眈々と

罠を張り巡らせている人間だというのは、

が一番良く知っている。

クレインを止めようなどとは思わない。

止めても無駄だ。

彼はもうずっと人間の奥深くに眠るどろどろとした感情の虜なのだ。

止めようとは思わない。

だがしかし、このどちらとも付かない二人の暮らしが続けば良いと――。



きっとクレインはラーズ・アル・グールの誘いを断らない。

病んだ狂気の道の先に、二人の未来も、平穏もありはしない。

それでも――。


(私は、彼に付いて行くだけ)
















15歳を迎えたはクレインの望み通り、見事、名門女子校の特待生として

ハイスクールに通い出した。

ゴッサムシティと言えど、代々洗練された上流階級マダムを輩出してきた

その学校は、品の良い女子生徒が集まる事で有名だった。

の自慢のツインテールには、セオリー通りに

グログランのリボンの黒いチョウチョが止まり、

お行儀の良さそうな女の子たちに囲まれて、

はやはり上手くやっているようだった。

別の側面で、はクレインの判断は正しかったと感じる。

生い立ち不明の孤児で、一階の精神科医の家に育っただが、

ここから新しい人生を始める事が出来る。

面倒なので表立ってはクレインは実の父親だという事になっていたし、

育ちも良く、躾けられた彼女達との相性はなかなか良かった。

少なくとも公立のミドルスクールに居た頃より、

が周囲に気を使わなくて済む事は確かだった。






は声を捧げて、クレインの愛を得た。

それは相変わらず歪んではいたが、

以前とは比べ物にならぬほど具体的な物となって表れた。

から甘えてもほとんどの場合無視される。

クレインの気が向くのを待つしかない。

それに――彼は「愛してる」なんて言葉を絶対に囁かない。

はそれも解っていた。

昼間はお互い、社会的に生きるための仮面を装って、

家に戻れば――禁じられた蠱惑の関係に溺れる。

それは戯れ付く猫の戯れのように健全な時もあれば、

毒牙を持った蛇のように危うい時もあった。

クレインが望めばは喜んで一糸まとわぬ姿にもなった。

彼はの青く瑞々しい果実にそっと唇を添えて、

呪詛のように言って聞かせる。



「女は否応なしに、脚を開く時が来る。

 お前も同じだ。

 ――だがそれは――今じゃない」



は頷く。

彼に触れられるのは、不快じゃない。

むしろ安らかな幸福だ。

薄い硝子に触れるように、控えめなふくらみに繊細に触れて、

か細い首筋の甘やぐ香りを肺に保存する。

彼はいつもそこで躊躇いがちに手を止め、の身体を抱きしめる。


「――が拒めば全て終わるのに、」


クレインは――、を崇拝していた。

一点の曇りも無い、純粋で穢れを知らぬ少女の事を――。

それでも罪も悪も柔軟に受け入れるという。

小さな胸に溺れて喘ぐクレインの頭を抱きしめて、

はしっとりとした声で囁く。


「――終わりなんて、欲しくないの」


もし神が居るとしたら。

ほど完璧な神の創造物は存在しないだろう――と思った。


(神なんてチープな言葉を呟く日が来るとはな)


「ジョナサン――、」


強請られるまま、今はまだ、触れるだけのキス――。




彼に罪悪感など微塵も無い。

あるのは――ただ、渇望だけだ。





































    ・


    ・


    ・


























「――のぬいぐるみの名前を借りる事にした」

企みを口端に添えて、不適な笑みを浮かべて見せる。

「…?《スケアクロウ》?」

「ああ――《スケアクロウ》は、人々の“恐怖”の象徴になる」

《スケアクロウ》――それは彼女にとっては希望の名だった。

「――何をするの?」

クレインは冷たく笑ってみせた。

「お前は何も知らなくていい。

 ただひとつ言える事は――私が《スケアクロウ》を演じるんだ。

 《ドロシー》は大人しく、私の後ろに隠れていればいい」

「…――スケアクロウ…、」







スケアクロウ…





スケアクロウ…





――《スケアクロウ》

































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―――――――――――――――――

…はい、そしてバットマンビギンズへ至る、と。

うん…なんか落ちとかは無いです。

映画の裏になんとかねじ込みたいなーという落ち。

ちなみにこの時点で14歳くらい←

時間をかなり飛ばして話を進めているので、

365日何年も何年もこーんな歪な関係で満ち足りている

二人の生活にも妄想止まりません。

医者なら出張や学会もあるだろうしね。

それがパリとかイギリスだったら諦めて連れてってくれそう。

家に独りで置きっぱなしってソーシャルワーカーが許さないから←

シャンゼリゼ通りとか凱旋門に大喜びするを見て、

まあいいか、みたいな。

焼きぐりじっと見てるから買って上げる、みたいな。

たまにはねー。きっとあるんだろうなー。

あとそのソーシャルワーカー対策として、

絵に描いた餅くらいべったべたな二人の写真とか飾ってればいいなー。

演技演技、でも1mmくらいは楽しんでる的な。

クレインならたまには外食にも連れ出してくれそうです。

「めんどくさい」の一言で。まさに鶴の一声。

あと自分のこと《スケアクロウ》って名乗ってヴィラン化しちゃった後も

の元には戻ってくる、みたいな。

わー☆ぜったい頭おかしいよー☆

…はい!以上!ここまですべて妄想です!





続き、書く事にしました><

ビギンズの本編に食い込ませます。

なんという荒技←

しばしお付き合い下されば幸いです!

20110325 呱々音