婚姻は早急に執り行われた。

それはいつまでも公に外に出ることの出来ない私を危惧した、

彼の配慮からだった。

夫婦となればふたりで街を歩くことも叶うし、

車など使わず堂々とこの家から外に出てる。

ハニは再婚ということもあり、本当に親しい者だけを招くだけに留まった。

式までの2週間、花嫁の身支度はすべてアイシャが手助けしてくれた。

ヘンナで爪を赤く染め、庭から摘んできた薔薇で髪を結い上げた。

イスラムでは結婚は契約だ。

裁判官、学の高い者、そして家族が証人となる。

証人立ち会いのもと、花婿と花嫁は互いに契約を口にし、署名する。

晴れて契約が成立すれば、ささやかな披露宴へと移るのだ。

披露宴の花婿と花嫁のダンスは大切な通過儀礼だ。

そして参加する人々もまた、喜びを祝してひたすらに踊り続ける。

スローダンスの最中、ハニは私の耳元でそっと告げた。


「実のところ――この結婚は、君のお父上が望んだことでもあった」

「え――?」


思わず足が止まりそうになった。

だがハニのステップは水が流れるように優雅に続いていた。


「最初の結婚が決まったとき言われたよ。

 本当は娘をもらって欲しかった――とね。

 それを聞いたとき、なぜか私は

 ついあの“約束”に縋りたい気持ちに駆られた」


澄み切ったオアシスのようなハニの瞳を見つめて、

私の心は確信で満ちていた。


「どんなことがあっても、私はハニの腕に抱かれる運命だったのね」

「私もそう思う――アラーの神に感謝を」


全ては神のご意思に違いないのだから。
















日付も変わろうという頃、私達はようやくホテルへと移動した。

ハニが用意したのはアンマンでも最上級の高級スウィートで、

この空間こそ彼が特別な夜に相応しいと望んだ場所だった。


「ずっと家に閉じ込めてきたんだ。

 今夜くらい外で2人きりになるべきだ」


そう言いながらハニの手が首の後ろに伸ばされる。

私の緊張をほぐすように、口付けが落とされる。

彼に応えようとするのに必死だった。

指先が再び彼の口に捕まると、それだけで背筋が痺れた。

身体の内側が燃えるように熱い。

鼓動はまるで暴れ馬だった。

私の中心は初めて与えられる愛撫に悦び、

胸を揉みしだかれ、彼を誘うように啼き続けた。

大きく膨れ上がったペニスは私の柔らかな肉を甘く裂き、

何度も何度も往き来し、貫いた。

その摩擦はいつしか快楽へと導き、強烈な絶頂を与える。

夢中で身体を絡め合って、夫婦にだけ許された崇高な行為に溺れた。











「私、いつかハニが訊いてくれた質問の答えを…少し変えたい」

「“君は私のために人生を差し出せるか”――かな?」


ハニの指先が私の髪を絡めとって、優しくもてあそぶ。


「――もちろん、喜んで差し出しましょう。

 人生も命も、貴方のためなら全て投げ打てる。

 でも、それは貴方に受けた恩の代償なんかじゃない。

 ハニ・パシャ――貴方を愛しく慕う、嘘偽りない献身から」


彼は献身に満足した王が如く優美に微笑むと、

信じられないくらい愛おしげに私の身体を抱きしめた。

そして一言「ありがとう」と呟くと、

交わした言葉を互いの喉の奥へ封じ込めるように、そっと唇を塞いだ。























end






































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イスラムの結婚披露宴は踊りに踊りまくって踊り狂う、

それはもう豪華(豪快?)なお祭り騒ぎがデフォルトだそうです。

もちろんシラフで。シラフでハイテンション、すごいですね。

お食事は出たり、出なかったり。

基本的には男女別の部屋で挙げる式が通常ですが、

最近では洋風のウェディングドレスを着る花嫁さんも多い。

お料理もブッフェでケーキ入刀なんかもあったり。プランは様々。

そして花嫁に結婚経験がない=処女と決まっているので、

初夜翌日は情事後に残る処女である印を家族などに見せます。

結婚経験がないのに印が残せなかった場合、殺されても文句は言えません。

婚約が解消されてしまうのはもちろんのこと。

ええ、体質的に出ない人もいますね。

そういう場合(とくに厳格な地域)を想定して、

ベッド脇に鳩の血を用意しておく事もあるとか。

国も違えば文化も違う。

こう言ったことも含めて、イスラム世界。好きです。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

20120614 呱々音