――史上6人目の女性F1ドライバーとしてデビュー。

そしてまさかのタイトル争い…異例づくしという印象は拭えないのですが?

「本当にその通り。“異例づくし”、自分でもそう思います。

 今振り返ってもレッドブルはなんて突拍子もない提案をしたんだろうって。

 通常では考えられないドライバー採用ですからね」



――GP2やF3のキャリアがない状態で苦労はなかった?

「ないと言えば嘘。カートやラリーの経験があるとは言え、

 実際にシーズンが始まるまでは気後れしていました。

 でも昨年のテストドライバーとしての経験が大きな成長だった気がします。

 ドライバーとして出走する話が決まると、すぐにベッテルやウェバー、

 クルサード、リカルドたちとRBマシンに乗ってシルバーストン・サーキットで

 実践的な感覚を掴むためのテストレースを行いました」



――すごい面子ですね(笑)

「みんな全然手加減してくれなくて(笑)」



――チームのドライバーたちの協力は大きかった?

「もちろん!それが無ければ今ここにはいないはず。

 あの大掛かりなテストは、私が実際レースに出られる状態かどうかの

 最終的な判断も兼ねていました。

 マルコ博士とクリスチャン、エイドリアンがOKを出し、その2週間後には開幕戦」



――マテシッツ会長は立会いましたか?

「もちろん」



――チームメイトのベッテル選手は毎シーズンマシンに女性の名前を付けていますね。

あなたもマシンに名前をつけた?

「私、みんな口にしないだけで、ほとんどのドライバーは

 自分のマシンに名前や愛称を付けてると思うわ」



――ずばりあなたのマシンの名前は?

「秘密」



――もともとマシン開発エンジニアとしてレッドブル・レーシングに関わっていましたが、

ドライバーとしてマシンに乗って何か気がつくはありましたか?

「とにかくたくさんのひらめきがありました。

 マシン開発に関わってきた人間として、

 最新マシンの問題点と改善点を具体的に指摘できるというのは最高でした。

 忙しいグランプリ中はディスカッションの時間を余分に設けることが難しいのですが、

 それでもテクニカル・チームのエンジニアは集まってくれましたね。

 マシンの話をするのは楽しいし、良いモチベーションを保っておける。

 パフォーマンスも断然違います」



――レッドブル・レーシング・“ファミリー”と呼んでいるそうですね。

「このチームは私にとって大切な家族なんです。支えであり、帰る場所」



――本当に仲がいいというのが外から見ている我々にも伝わってきます。

ずばりここであなたにとっての“セバスチャン・ベッテル”とは?

「…弟?いえ冗談です(笑)でも兄弟という意味でならちょっと本当。

 仲の良い友であり、もちろんライバル。

 たとえ喧嘩しても起きたら忘れてる。そんなスタンスで付き合えるのがセブ」



――“エイドリアン・ニューウェイ”とは?

「恩師。そしてお父さん代わり。私が心から尊敬する人です。

 何があっても必ず見放さず、ずっと見守ってくれているのを知っているから、

 チャレンジへの強い確信とエネルギーを与えてくれます」



――“クリスチャン・ホーナー”とは?

「すべて。クリスチャンは私にとって初めて出来た親友なんです。

 誰よりも私を理解してくれる人だし、いつも心の支えになってくれる。

 彼はレッドブル・レーシング・“ファミリー”まさにそのもの」



――もうお馴染みの光景ですが、いつもホーナー氏といっしょにいるのには何か特別な理由が?

「レース前に限らず、昔からの習慣みたいなものですね。

 彼と少しでも話をしないとどうも落ち着かなくて。

 クリスチャンが私に合わせてくれている、と表現するのが1番正しいと思いますが」



――今シーズンを走ってきてどうですか?

「とにかく必死でした。ずっともがいてる感じです。弱点も露見しました。

 もちろん私だけじゃなくみんなも必死。

 でもそのおかげで楽しかったし、充実していた」



――とても余裕そうに見えましたが(笑)

「本当に?(笑)じゃあそういうことにしておいて下さい(笑)」



――デビューの際に来シーズンは出走しないと発表されていましたが、

契約延長の可能性について聞かせて下さい。

「デビューが決まったとき、ドライバー契約は1年限りとお願いしたんです。

 クリスチャンとマルコ、会長は私の強い希望を承諾してくれました。

 少なくとも元々の職であるテクニカル・チームにはエンジニアとして戻ります。

 そちらの来季の契約は更新されました。

 そういう意味でなら、来年もレースで会えますよ」



――マシンの設計に大きく貢献されるわけですね。大変楽しみです。

「チームといっしょに更に上を目指します」



――最後になりましたが、F1やモータースポーツ界でレーサーを目指す女性たちに一言。

「とても鼓舞できる立場じゃないです。でも…これだけは言えるので。

 チャンスを掴むためには、まずは自分が信頼される人間になることです。

 それがイコール誠実さとは限らない世界ですが…(笑)

 でもマシンでもドライバーでも“こいつは勝てる”と思わせることも

 立派な信頼だと私は思うので」













「…また読んでる」


は眉間に深く溝を刻みながら、忌まわしげに分厚い女性誌を睨みつける。


「いいじゃない。一流雑誌よ、名誉なことだわ」


ヴェラは今しがた読み終えたその記事を閉じた。


「…雑誌のインタビューって記録として残ってしまうのが最大の難点」


が受けたインタビューの掲載された雑誌に、ヴェラはすべて目を通していた。

一方本人は恥ずかしがって雑誌を開くことも滅多にない。

あと数時間もすればブラジル入りだ。

機内のクルーたちが体力温存のため無心に睡眠を摂るのは、もはやお決まりの光景である。



ヴェラが穏やかに声を掛ける。


「あなたは良いドライバーよ」


改めて言われると、どう返していいかわからなくなる。

は恥ずかしそうに笑うと、その言葉に応えるようにヴェラに信頼のハグをした。


「ヴェラが見守ってくれたおかげだよ」



































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20130613 呱々音