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「おとうさま、おとうさま。 ライオネルが泣き止まないわ」
ちょっぴりおませさん、愛らしく、利発な天使だ――。 揺り籠を眺めながら、ライオネルと呼ばれたその子、 生まれたばかりの弟をなんとかあやそうとしている。 カワードは優しく言った。
額の、そう…髪の毛を。優しく撫でてあげてごらん?」
幼い弟は先程までのぐずりが嘘のように、すっと瞼を閉じてしまった。
愛娘を軽々と抱き上げて、カワードは得意げに言った。
私が前髪を撫でると、どんなに泣いていても、 たちまち良い子になったものだ」
――ああ――これで良かったのだ。 とカワードは、飼い主を失くした犬には違いなかったのだ。 弱さを持ち合い、身を寄せ合い、互いを守り合い、必死になって生きてきた。 だがそれも。今となっては――ふたりは同志だった。 夫であり、妻であり。 兄であり、妹であり。 友であり、家族であり。 かけがえのない良き理解者だった。 ブラックウッドの亡霊は決して消えない。 かくも見事に人の心を捕えて止まぬものなのか――。 だが――それを上手く活かす方法を、とカワードは見つけながら生きてきた。 物思いにふけるカワードの背後からやんわりと手が伸びて、 の細い腕が彼の腰にそっと甘えて巻き付いた。
お母様にもお父様をちょっぴりわけてちょうだいな」
お母様にはクロエをあげるわ」
幸福そのものという表情で、クロエを抱きしめた。
妻の柔らかな赤毛を指に絡め、キスを落としてやる。 幸せの香りを肺いっぱいに吸い込み、この胸を満たす。 うっかり泣き出さぬようにせねば――心の中でひとりごちた。 |
最後までお付き合い下さり本当にありがとうございました。
なんともやるせない夢…もごもご。
ブラックウッドの野望は成就しませんでしたが、
「世継ぎを残す」という至極人の道に適った行為は達成される、
というのが書きたくて。
うちのブラックウッドに“愛”という観念はありません。
存在は認知しているけれど、どういう存在か正体を知らないのです。
同じ罪を背負った彼女を見つけ、魅入られてしまう。
本来ならこの時点で「恋しちゃった」となるのでしょうが、
彼にそういう感情を推し量るスキルは備わっていないのですね…。
カメオの写真も「彼女の写真を持ち歩きたいと思ったから持っている」
という認識にすぎない――でもその正体こそが愛なんだよ、と。
もう少し早く出会っていたら、教えてあげられたのかもしれませんね。
ブラックウッドに心酔しきっているカワードと彼女は同志に思えてなりません。
歪だけれどそこには確かな“想い”があるのでしょう…なんて。
下にスクロールしていただくと、二度目の逢瀬の後、
自室に引きこもっちゃったブラックウッド卿の短い懺悔(のようなもの)
が晒してあります。読まなくても繋がります。
本編に入れるとどうしても締まらなかったもので(苦笑)
お粗末さまでございます。
20120525 呱々音
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さてさて
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“ブラックウッド卿/独白” 私は闇の魔術を用いて彼女を――を犯してしまった。 浅ましい――。 こんなはずではなかった。 脅しのつもりだった。 だが――彼女は怯えながらも、私の下に組み敷かれる事を望んでいた。 私は再び彼女の身体を味わい――そして確信した。 やはり世継ぎを生むのはこの女しかありえないのだと。 迎えに来たカワードに素気なく後を託し、私はこうして自室へ逃げたのだ。 微かに扉の向こうで音がする。 カワードが言いつけ通り、の世話をみてやっているのだろう。 動揺してはいけない。 事実だ――そう――私が、私の意思で犯したのだから。 だからこの頬を濡らす雫は、私とは一切関係の無い大いなる混乱だ。 強いて言うならば。 この瞬間、私が忌避するのは――彼女の心が私の支配を離れる事だった。
慈しむという感覚。 恋するという感覚。 私にとってそんな感情は全くの虚飾だ。 闇を崇拝し、死を尊ぶ。 計画のための犠牲は厭わない。 私こそがヘンリー・ブラックウッド。 死に取り憑かれた、呪われし忌み子こそが、 この世を掌握する――。
どうやら私がを憎からず想っていることは事実のようだ。 この感情をどう伝えれば良いのか。 私はそれを識らなかった。
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