南国のリゾート地でヴァカンスなんて洒落た計画を持ちかけたのは、
おそらくダニーたちの仕事のせい。
籐で編まれたテーブルと椅子を並べて、 トロピカルカクテルとアヒポキを頬張りながら、 レイバンのサングラスを光らせる男――ラスティ。 は彼に向かい合って座り、 プルメリアの花で飾られた冷たいコナコーヒーは汗をかいている。 ビーチではライナスとイエンとモロイ兄弟がワニの浮き輪の取り合いをしていた。 その小競り合いなどさして気にとめる素振りも見せず、は聞いた。
「さあ?バナナボートでも借りてるんじゃないか?」 「ねえ、これって新婚旅行って扱いになるのかしら」 「馬鹿言うなよ。国内旅行だぜ。まあ海は越えてるけど」
神の御前で実に厳かに結婚の誓いを立て終えた次の瞬間、 列席していた10人…新郎を含めると11人は新婦の手を取って、 真っ白なリムジンに飛び乗った。 そしては一瞬で悟る。 その証拠にとりあえず大きく溜息を吐き、 今回はどこへ連れていかれるのかと聞いたのが、 つい12時間程前の事。 するとダニーは一言、ハワイだよ、と言った。 かくしては結婚初夜を飛行機の中で迎えるという、 自分たち夫婦の意向をまったく無視した計画に巻き込まれた訳なのだが―― そういったハプニングに慣れてしまい、 受け入れている自分に気付き、思わず呆れてしまった。 計画者とその一味は、もちろん荷物がたっぷりと収められた立派なスーツケースを 空港に待機させていたが、はなんの用意もなかったから現地調達するしかなかった。
「安心しろ。俺もだよ」
ただ彼らの抜け目の無い所は、ラスティとの財布と携帯だけは持ってきたという辺りか。 さすがというか、そこの所はしっかりしている。 拗ねても無駄だという事は嫌と言うほど解っていたのだけれど、 怒ったフリくらいしても罰は当たらないだろうと思って は終始だんまりを決め込んでいた。 乗り込む飛行機がルーベンのプライベートジェットだった事だけが せめてもの救いである。 空港に着くとポリネシアン・ハズバンドが新郎新婦を見て、 お幸せに!と口をそろえて迎えてくれたが、は愛想笑いもそこそこに さっさとこの締め付けの激しいドレスを脱いでしまいたかった。 ラスベガスの大富豪たちが好んで利用する高級ホテルにチェックインを済ませると、 ラスティはの腹の虫を――まあ今更そんなに立ってもいなかったのだが―― なだめようと、密かに、抜け目無く、空港のブティックで ブランドの新作コレクションのワンピースとサンダルを買ってにプレゼントした。 は旦那様のプレゼントしてくれた衣装にとりあえず身を包んで、 ストローハットとサングラスを買いに出かけて――今に至る。
「いや。今回は君はお姫様だ。ゆっくりヴァカンスだけを満喫して待っててくれ」 「じゃあなぜ連れてきたの?」 「君の男が駄々こねたんだ」 「淋しいって?」 「そう――いや――うん、まあ……そんなところだな」 「私を一緒に連れてけって?」 「っていうか……君とは絶対離れないって神と母親に誓ったんだ!ってね」 「その男バカね。…でも嬉しい」
昨日交わしたばかりの指輪にうっとりと口付けた。
「止して頂戴。私は小さな頃からハワイの神話文化を敬愛してるの。 ベガスとここは違うのよ」
ルブタン履いてケイタ・マルヤマ着てる君も好きだけど、 ムームーにサンダル姿の君も大好きだよ」 「まあラスティ、嬉しいわ。 でもね貴方が真剣に子供を作る事考えてくれたら、 私はいつだって喜んでヒールの低いジミーチュウの靴に履きかえるわ」
「また好きになった?」 「ああ。君は最高の奥さんだよ」
ラスティがダニーに「結婚しろ。子供作れ」って言われてるのが好き。
ライアン夫人になるなら、ちょっとの事じゃ動じない
肝っ玉系が理想的かなーと思って。
ヒロインの職業は女優さんっぽいイメージ。
有名なファッションライターとかでも良いかもしれない。
妄想してみてください(もんもん)
20110212 呱々音
|