いつでも少し濡れたような、しっとりとして、ゆるやかに波打つ、

色素の薄いピンクレモネードソーダみたいな色味を帯びたその髪に、

僕はそっと手を伸ばす。

指先に髪が触れると、僕は駆け上がる恍惚と、安堵と、愛しさに耐えられず目を閉じる。

たったそれだけのことが、もどかしく、と同時に、貴重な瞬間だった。

僕はここに戻ってきたことを強く教えられる。






彼の少し不恰好に湾曲した左手の小指が、私は大好きだった。

うっかり歯を立てると、彼がその整った眉間をきゅっと寄せ、

噛み切ってくれるなよと優しく乞うのも私には効果的だった。

色素の薄い肌に、無数にちらばるそばかすの模様を、

まつ毛の触れ合う距離で眺める。

彼の小指を口に含むと、それは別の生き物みたいにひくりと微かに動いて、

私の舌をくすぐった。






彼女は僕の整った髪を、あえてぐしゃぐしゃに乱すのが好きなんだ。

甘く絡みつくような手つきで、解きほぐすように。

コーヒーとミルクの味のするキスに夢中になっているうちに、

それはあっという間に行われる。

彼女の身体に触れる時、僕は常に新しい驚きと、奥ゆかしい気持ち、

めちゃくちゃに乱したい衝動に、薄針のグラスを掌の熱で慎重に温めるような…

綯い交ぜになった複雑な葛藤に苛まれる。






彼がここに居られる時間はいつだって限られている。

その短い時間を、いかに私の色で満たせるか。

トレーニングで鍛えられた美しい筋肉に覆われた薄い肉体は、

まるで野生のチーターのようにしなやかで、エロティックな身体の線は、

彼が自覚している以上に女の胸を甘く圧迫する。

とても優しく、慎重に、何度触れ合っても躊躇うように。

私は腕を伸ばす。

彼の腕が心置きなく、私の身体にくまなく絡みつくように。






愛し合った後、僕らは必ず手を繋いで出かける。

それはこのセブンノークスの他愛もない‘古典的’な街並みだったり、

緑地の散歩だったり、あえて遠出をすることもたまにあるが、

素朴で飾り気のない時を僕らは望んでいた。

日が暮れ始めるとありったけのキャンドルをバルコニーに並べて、

ピクニック風のディナーを楽しむ。

僕の人生には、どうしても彼女が必要だった。





「マイク。どうして私なの?」





私は誇らしさと同時に、いつも頭のどこかにある不安を込めて問う。

本当はそんなこと聞いてはいけないのかもしれない。

でもきっと彼なら答えてくれる――そんな確信があった。

彼は少し面食らったようだが、そんな馬鹿げた質問に

とても柔らかい笑みで応えてみせた。

薄い唇の左端をうっとりと持ち上げて、とろんと瞳を笑わせて、

大好きな小指のついた左手を差し伸べて、私の頬を包み込む。





じゃなきゃ意味がないよ」





上目で見つめれば、今度はどこに隠していたのかもわからないほど真剣に輝く目に捕まる。

私は息もできない。

軽はずみに頬を赤める私にも、彼は動じなかった。

それどころかただ深く、深すぎるほどの誠実さで、私の手と頬を掴んで離さない。

逃げることの叶わない、熱い視線に、絡め取られて呼吸すらままならない。





「君を愛してる。死ぬほど深く。息もできないくらい」





私は今すぐ、彼の小指が欲しくて欲しくてたまらない思いがした。




















































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需要がない。

彼はとってもセクシーで、なに考えてるかわからなくて、あまり見せない笑顔がキュートで、
そしてめちゃくちゃ紳士だと思います(作文)

20151017 呱々音